結婚の形が変り行く時代にあっても伝え残してゆきたいゆかしい風景がある。美しい郷土に咲く「ハレの日」の衣裳に変らぬ願いを託してみたい。
無垢の白・再生の赤・誓いの黒に込めるもの

花嫁が実家を旅立つ行事を鳥取では、「出立ち」といい、昔婚礼の際には花嫁は白無垢をまとい、玄関からではなく縁側から出ました。
出立の時。
「実家と縁を切る」という意味で花嫁が縁側から出ると、花嫁が使っていた茶碗を割り、箸を川に流し、歩いた跡を一束の藁で掃き、その足跡をたどって、二度ともどってくることがないようにと願いを込めて、門火を燃やした。
この地方の昔のお葬式と同じ形。結婚式は二人を囲む周りの人たちのこころ。
そして嫁ぎ先では「婚家に縁を入れる」意味で縁側から入ると祝言は納戸で行われました。
納戸は新しい霊魂が入ってくる神聖な場所。
また、ハレの儀式には神参りと同じ精神が流れていました。
何色にでも染まる無垢の白。嫁ぎ先の娘として生まれ変わる再生の赤。他の色には染まらない黒は貞節を誓うという決意の象徴
婚礼の衣裳には、色だけでなく、着物の文様や帯の結び方に至るまで、花嫁の幸せへの願いが込められています。
そんな伝統、風習の中に残る婚礼の原点を大切にしながら、日本文化の粋を集めた世界に誇れる衣装文化の奥深い魅力を伝えるものであると同時に「和装遊戯」を着るすべての人に幸せを感じてもらえる衣装でありたいと願っています。
衣装は気持ちを表すための手段の一つなのですから。